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大阪高等裁判所 昭和38年(ネ)461号 判決 1964年4月09日

事実

控訴人の抗弁。

右手形および小切手は、控訴人が被控訴人より買受けた軽自動車の代金の支払のために振出したものであるが、右売買契約は当事者で合意解除し、控訴人は右軽自動車を被控訴人に返還したから、控訴人は本件手形および小切手の支払義務はない。

被控訴人の再抗弁。

「本件手形および小切手は、控訴人より返還を受けた軽自動車の損傷に対する賠償請求権確保のために、被控訴人に留保するとの特約が昭和三七年一一月二八日に当事者間に成立したものである。もつとも、その際、損害額についての協定は成立にいたらなかつたけれども、右損害額は金二三万七五二七円である。したがつて、控訴人は右損害額の範囲内において、本件の支払義務を負うものである。

理由

控訴人が本件の約束手形および小切手を振出したことは、控訴人の自認するところであるけれども、右手形および小切手は控訴人が被控訴人より買受けた軽自動車の代金の支払のために振出されたこと、右売買契約が合意解除されたことは当事者間に争がないから、別段の特約の存しない限り、本件手形および小切手上の債務は、右合意解除による代金債務の消滅により、同時に消滅する筋合いである。しかるに、この点に関する特約として被控訴人の主張する再抗弁事実については、被控訴人において何等立証しないから、被控訴人の再抗弁を採用するに由ない。したがつて、本件の手形および小切手上の債務は上記の理由により消滅したものといわなければならない。

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